物性研究所ワークショップ

「第2回ナノスケール物性科学の最先端と新展開」

2021年
6月22日(火) 13:00-18:00

オンライン開催

オンラインミーティングソフトZOOMを用いて開催します。参加方法・URLは参加登録後Emailにて連絡します。

参加費無料

昨年度(2020年7月)の第1回のワークショップに引き続きまして、このたび第2回のナノスケールワークショップを開催することといたしました。今回は、低次元物質における新奇物性発現やスピントロニクスさらには量子ビットなどの量子輸送現象に注目いたしまして、当該分野での新進気鋭の8名の研究者にご講演をお願い致しました。
オンラインではありますが、参加費無料ですので、皆様奮ってご参加いただけますよう、宜しくお願いいたします。

【参加者へのお願い】

・ 参加登録されていない方は、こちらから至急お願いいたします。

・ 講演中は、ノイズやハウリング防止のため、ミュートに設定してください。

・ ZOOMでの表示名を、以下の方法で「氏名(所属)」となるように設定してください。

・ 質問がある方は、「手を挙げる」ボタンを押してください。

【名前変更の方法】

「参加者リスト」から最上段のご自身のお名前にカーソルを合わせ、「詳細」をクリックし、「名前の変更」をクリックしてください。入力ウィンドウが現れますので、「氏名(所属)」を入力してください。
「参加者リスト」は、中央下部の参加者のマークをクリックすると出てきます。

【「手を挙げる」方法】

質問する際は、以下の方法で「手を挙げる」ボタンを押してください。順に座長が指名します。氏名されたら、ミュートを解除して質問してください。質疑応答が終わりましたら、同様の方法で「手を降ろす」ボタンを押してください。

画面右下に現れる「リアクション」から「手を挙げる」をクリックしてください。

Zoomのレコーディング機能は使用できません。また、発表内容の写真・ビデオ撮影や録音、またはPCの機能(スナップショット、スクリーンショット等)を利用した画面録画は禁止です。これらは不正行為となりますので、絶対におやめ下さい。

Program

講演は、30分発表+5分討論を予定しています。

2021年6月22日

13:00- 13:05 所長挨拶 森初果


座長:三輪 真嗣 (東大物性研)

13:05-13:40 若村 太郎(NTT基礎研) 「原子層物質におけるスピン軌道相互作用が創出する新奇物理現象の開拓 」

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原子層物質は、多彩な物性が1原子層の薄さという究極の2次元空間で実現可能な点が特徴である。またこれらの物質を用いたヘテロ構造により新奇な物理現象を誘起出来ることも大きな魅力である。本発表では、特にスピン軌道相互作用により創出される興味深い現象に着目し、強いスピン軌道相互作用を持つ遷移金属二硫化物とグラフェンのヘテロ構造を用いたグラフェンへの強いスピン軌道相互作用の誘起[1,2]、さらに同様の系を超伝導と組み合わせることで実現される磁場に対し極めて強固な超伝導端電流の観測について発表する[3]。加えて現在進行中の原子層物質における高次トポロジカルhinge stateの実証実験についても紹介する。
参考文献:
[1] T. Wakamura et al., Phys. Rev. Lett. 120, 106802 (2018).
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.120.106802
[2] T. Wakamura et al., Phys. Rev. B 99, 245402 (2019).
https://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.99.245402
[3] T. Wakamura et al., Phys. Rev. Lett. 125, 266801 (2020).
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.125.266801

13:40-14:15 張 奕勁(東大生産研) 「二次元物質におけるバルク光起電力効果」

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グラフェンや遷移金属ダイカルコゲナイドに代表される二次元物質は、層数や層と層の重なり方、次元性の変化に合わせて系全体の対称性及び物性が大きく変化する。この特徴を活かした新奇物性の創成や新機能デバイスの実現に向けた研究が世界中で行われている。我々は対称性に低い物質においてのみ出現するバルク光起電力効果に着目し、遷移金属ダイカルコゲナイドを中心にこの現象の研究を行ってきた。バルク光起電力効果は極性を持つ結晶構造や波動関数の持つベリー接続と密接な関係があり基礎物性の観点でも非常に興味深い現象である。また、pn接合を使わずに太陽光から電気エネルギーを生成できるため、将来的な発電デバイスへの応用の可能性も模索されている。
参考文献
Enhanced intrinsic photovoltaic effect in tungsten disulfide nanotubes, Y. J. Zhang, T. Ideue, M. Onga, F. Qin, R. Suzuki, A. Zak, R. Tenne, J. H. Smet & Y. Iwasa
Nature, 570, 349 (2019).
https://doi.org/10.1038/s41586-019-1303-3

14:15-14:50 吉見 龍太郎(理研CEMS) 「磁性ラシュバ半導体が示すスピントロニクス特性」

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半導体二次元界面や反転中心の破れた結晶構造を持つ系では、スピン軌道相互作用によってスピン分裂したバンドが実現する。このような系では電場の印加で非平衡なスピン蓄積を生じることが可能になり(エデルシュタイン効果)、高効率なスピン流発生機構として近年注目されている。本講演では、バルク状態として強誘電性・強磁性を示す極性強磁性半導体Ge1-xMnxTe薄膜において観測された電流誘起磁化反転現象について発表する。また、強磁性ラシュバ系に特有なバンド構造と、磁化反転効率のキャリヤ数依存性との関連性についても議論を行う。
参考文献
Current-driven magnetization switching in ferromagnetic bulk Rashba semiconductor (Ge,Mn)Te
R. Yoshimi, K. Yasuda, A. Tsukazaki, K. S. Takahashi, M. Kawasaki and Y. Tokura,
Science Advances, 4, eaat9989, (2018).
DOI: 10.1126/sciadv.aat9989
プレスリリース:https://www.riken.jp/press/2018/20181208_1/index.html
ホームページ:https://sites.google.com/site/ryutaroyoshimi/

14:50-15:25 塩見 雄毅 (東大総合文化) 「ディラック半金属Cd3As2ナノワイヤにおける表面状態由来の量子振動」

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トポロジカルディラック半金属Cd3As2の表面状態は多くの興味深い新規物性を生み出し、 バルク結晶のみならず薄膜やナノ構造体など幅広い系で精力的に研究されてきた。本研究では、安価なCVD法で作製が可能なCd3As2のナノワイヤに着目し、実験研究を行った。Cd3As2ナノワイヤ試料をCVD法で合成し、磁気抵抗測定を行った結果、表面状態に由来するシュブニコフ‐ド・ハース振動の観測に成功した。表面状態由来の量子振動の観測はナノワイヤ試料では初めてである。ナノワイヤ試料は安価なCVD法で合成が可能であることから、トポロジカル物性の基礎研究においてのみならずトポロジカル物質応用の観点からも重要な成果である。
研究室HP: http://yukishiomi.com/

写真撮影

休憩 15:25-15:40


座長:勝本 信吾(東大物性研)

15:40-16:15 高田 真太郎(産総研) 「固体電子系における飛行量子ビットの実現と物性測定への応用」

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・アブストラクト:
固体電子系は従来の半導体技術との対応から集積性に優れていると目されており、大規模な量子デバイスの実現に向けた研究が盛んに行われている。本研究では、特に動的な電子の量子状態を制御することで実現する飛行量子ビットに着目する。講演では、結合量子細線とアハロノフボームリングの複合系における伝導電子に対する飛行量子ビットの実現と実現した飛行量子ビットを用いた量子ドットの散乱位相の測定について紹介する。その後、飛行量子ビットの単一電子動作の実現に向けて行っている表面弾性波を用いた単一飛行電子の制御に関する研究について述べる。
・参考文献:
[1] M. Yamamoto, S. Takada et al., Nature Nanotechnol. 7, 247 (2012).
https://www.nature.com/articles/nnano.2012.28
[2] S. Takada et al., Phys. Rev. Lett. 113, 126601 (2014).
https://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.113.126601
[3] H. Edlbauer, S. Takada et al., Nature Communications 8, 1710 (2017).
https://www.nature.com/articles/s41467-017-01685-z
[4] S. Takada et al., Nature Communications 10, 4557 (2019).
https://www.nature.com/articles/s41467-019-12514-w
・ホームページ:https://staff.aist.go.jp/shintaro.takada/

16:15-16:50 中島 峻(理研CEMS) 「半導体電子スピン量子ビットの高速量子状態制御」

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近年、半導体量子ドット中の電子スピンを量子情報単位として利用することによる量子コンピュータの研究開発が進展している。量子コンピュータ実現のためにはコヒーレンス時間内の高速スピン制御が必要とされるが、それだけではなく様々な操作や測定を高速化することによって、新しい現象や量子制御が可能になることがわかってきた。
たとえば、2つの電子スピン間の量子もつれ制御と高速電子スピン測定を組み合わせることで、電子スピンの量子非破壊測定が実現できる[1,2]。単一観測量の繰り返し測定によって、従来手法では到達不可能な測定精度が得られることがわかった。
また、量子ドットを電場や磁場に対する高速かつ高感度なセンサーとして利用することにより、雑音を検出しその結果に応じた量子操作を行うフィードバック制御を組み込むことができる。これによって、量子ドット中の電荷状測定の劇的な高速化や[3]、不均一雑音の抑制によるスピンコヒーレンス時間の向上[4]等といった新機能を実現することができた。
・参考文献:
[1] T. Nakajima A. Noiri, J. Yoneda et al., Nature Nanotechnology 14, 555 (2019).
https://doi.org/10.1038/s41565-019-0426-x
プレスリリース https://www.riken.jp/press/2019/20190416_1/index.html
[2] J. Yoneda, K. Takeda, A. Noiri et al., Nature Communications 11, 1144 (2020).
https://doi.org/10.1038/s41467-020-14818-8
プレスリリース https://www.riken.jp/press/2020/20200303_2/index.html
[3] T. Nakajima, Y. Kojima, Y. Uehara et al., Physical Review Applied 15, L031003 (2021).
https://doi.org/10.1103/physrevapplied.15.l031003
[4] T. Nakajima, A. Noiri, K. Kawasaki et al., Physical Review X 10, 0110620 (2020).
https://doi.org/10.1103/PhysRevX.10.011060
プレスリリース https://www.riken.jp/press/2020/20200310_2/index.html

16:50-17:25 橋坂 昌幸(NTT基礎研) 「分数-整数量子ホール系界面における電荷ダイナミクス」

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電子が常伝導体から超伝導体に入射すると、超伝導体中にクーパー対が形成され、常伝導体に正孔が反射されるアンドレーエフ反射が起こる。アンドレーエフ反射は超伝導特有の現象と考えられがちだが、その根底にあるのは普遍的な電荷保存則であり、超伝導以外の材料でも類似の現象が起こる可能性がある。本講演では、分数電荷準粒子を電荷キャリアに持つ分数量子ホール系界面において、分数電荷のアンドレーエフ反射を観測した実験について紹介する。その結果は、トポロジカル量子多体系における輸送現象の理解に向けて重要な知見を与える。
参考文献
Masayuki Hashisaka et al., “Andreev reflection of fractional quantum Hall quasiparticles”, Nature Communications 12, 2794 (2021).
DOI: 10.1038/s41467-021-23160-6
プレスリリース: http://www.brl.ntt.co.jp/J/2021/05/latest_topics_202105141456.html
HP: http://www.brl.ntt.co.jp/people/hashisaka.masayuki/index.html

17:25-18:00 川上 恵里加(理研白眉CEMS) 「ヘリウム液面電子を用いて量子コンピュータを実現することを目指した研究」

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 ヘリウム液面上の電子は、真空中に存在するため周りからの揺動を受けづらく、高性能な量子ビットを実現出来ることが期待出来る。また、電子間距離が1um程と長くても、クーロン相互作用の大きさは十分大きいため量子ビットゲートを実現出来ることが期待出来る。ヘリウム液面上の単一電子を量子ビットとし、それらを集積化して量子コンピューターを実現することを目標とする。
 はじめに、ヘリウム液面上の単一電子のリュードベリ状態を読み出すことを目指す。従来のbolometerなどを用いた多数の電子に対する読み出し方法[1]は、単一電子に用いようとする場合、感度が十分でない。そこで我々は、より感度が高く集積化可能なimage-charge detectionと名付けた新たな読み出し方法を確立した[2,3]。
 周りからの揺動を受けづらいとは言ったが、液体ヘリウムの液面励起(リプロン)によってヘリウム液面上の電子のリュードベリ状態の励起状態から基底状態への緩和が起こる。我々は、動的にその緩和現象を測定し、緩和時間は最低測定温度(135mK)で1us程であった[3]。
将来的には、リュードベリ状態ではなく、スピン状態を量子ビットの状態として用いることを目指す。スピン状態は、量子ビットの性能を決める緩和時間などの量子状態保持時間が長いことが期待されるためである。スピン状態とリュードベリ状態の間に人工的な相互作用を作り出し、スピン状態を用いて量子計算を行う。
・参考文献
[1] Direct Spectroscopic Observation States Outside Liquid Helium.
C. Grimes and T.R. Brown, Phys. Rev. Lett. 32, 280. (1974).
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.32.280
[2] Image-charge detection of the Rydberg states of surface electrons on liquid helium.
E. Kawakami, A. Elarabi, D. Konstantinov, Phys. Rev. Lett. 123, 086801 (2019).
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.123.086801
[3] Relaxation of the excited Rydberg states of surface electrons on liquid helium.
E. Kawakami, A. Elarabi, D. Konstantinov, Phys. Rev. Lett. 126, 106802 (2021).
https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.126.106802
・URL
https://sites.google.com/view/febqi/
https://www.riken.jp/research/labs/rqc/floatelectron_based_qtm_inf_riken_hakubi/

18:00 閉会

Registration

ワークショップは終了いたしました。
たくさんのご登録ありがとうございました。

世話人

物性研究所

勝本 信吾
大谷 義近
長田 俊人
山下 穣
三輪 真嗣
長谷川 幸雄

お問い合わせは長谷川(hasegawa-@-issp.u-tokyo.ac.jp)まで。
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